設計に使うテンプレート
各章で紹介した型を、書き写して使える形でまとめました。「表をコピー」を押すと、表計算ソフト(Excelなど)にそのまま貼り付けられる形でコピーされます。記入例は第3部のみなもと家電(架空)のものです。
- 上から順に(1→12)書くと、第3部と同じ流れで一つの業務を設計できます
- 全部を書く必要はありません。業務の大きさに合わせて、必要なものから使ってください
- 迷ったら、各テンプレートの「関連する章」に戻って考え方を確かめてください
テンプレート 1業務分解表
業務を工程に分け、工程ごとに6つの列を埋めます。前の工程の「出力」が次の工程の「入力」になっているかを確かめると、書き漏れに気づけます。
| 工程 | 担当 | 入力 | 判断基準 | 出力 | 件数・時間 |
|---|---|---|---|---|---|
| (例)回答の内容を調べる | 担当者 | 回答集、取扱説明書、保証規定 | どの資料のどこに答えがあるか。なければ他部署に確認 | 回答の根拠 | 9分/2割は他部署の回答待ち1.5日 |
書き方のコツ:工程は「〜を〜する」と動詞で。担当は役割名で。判断がない工程は「なし」と書く。 関連する章:第2章、第14章
テンプレート 2例外一覧表
通常の流れとは違う処理をしているケースを集め、扱い方を「通常の流れに組み込む」「決まった分岐にする」「人が個別に対応する」から選びます。件数だけでなく影響の大きさで決めます。
| 例外の種類 | 頻度 | 影響の大きさ | いまの処理 | 今後の扱い |
|---|---|---|---|---|
| (例)安全に関わる問い合わせ | 月20件前後 | 極めて大きい | 気づいた担当者が口頭で伝える | 決まった分岐。受信直後に検知し、リーダーと品質保証部へ |
テンプレート 3任せ分け表
工程ごとに、担い手(人・システム・AI)と任せ方のレベル(0〜3)を決めます。担い手は「なくせないか → システム → AI → 人」の順で考えます。
| 工程 | 担い手 | 任せ方 | 4観点(影響・基準・量・確かめやすさ) | 理由 | 上げる条件 | 結果の責任 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| (例)種類分け・割り振り | AI | レベル2 | 影響:小/基準:明確/量:多/確かめやすさ:高 | 誤っても担当者が受け取った時点で気づける。実績がまだない | 正確さ95%以上が4週続いたらレベル3 | 窓口リーダー |
任せ方:レベル0 人だけ/レベル1 AIが提案し人が決める/レベル2 AIが処理し人が確認/レベル3 AIに任せ例外だけ人へ。 関連する章:第3章、第15章
テンプレート 4人に回す流れ(エスカレーション)
AIが判断できないとき、例外に当たるときに、誰にどう回すかを決めます。回す先と期限が曖昧だと、判断待ちの案件がたまります。
| 条件 | 回す先(不在時の代わり) | 添える情報 | 期限 | 戻し方 |
|---|---|---|---|---|
| (例)資料に記載なし | 担当者 → 分からなければリーダー | AIが「記載なし」とした理由 | 当日中にリーダーへ | 回答を回答集に追加する候補として記録 |
テンプレート 5要件メモ
何を、どこまで実現するかを1枚にまとめます。システム部門やベンダーへの相談の出発点になります。「やらないこと」と「成功の物差し」は必ず書きます。
| 項目 | 書くこと | 記入欄 |
|---|---|---|
| 件名 | 何の業務の、何のための仕組みか(1行) | |
| 目的 | 解決したい困りごとと背景(2〜3文) | |
| 成功の物差し | 指標・いまの数字・目標・測り方 | |
| 対象範囲 | 業務の始まりと終わり、対象件数 | |
| やらないこと | 今回は対象外とすること | |
| 利用者と場面 | 誰が、いつ、どのくらい使うか。いちばん忙しいとき | |
| 機能要件(必須) | これがなければ目的を達成できないもの | |
| 機能要件(あるとよい) | なくても使えるが、あれば効果が上がるもの | |
| 非機能要件 | 速さ・量・止まらなさ・安全性・費用・保存(テンプレート12) | |
| AIに特有の要件 | 正確さの水準と測り方、根拠、判断できないとき、渡してよい情報、人の確認、記録、変更時の確かめ直し | |
| 同時に進める施策 | AI以外で解決すること | |
| 制約・前提 | 変えられない仕組み、守るべきルール、予算、期限 | |
| 添付 | 業務分解表、任せ分け表 など |
テンプレート 6項目定義表
データの項目ごとに、意味・形式・正本を決めます。特に「意味」と「正本・決め方」の列が大切です。AIが作る項目と人が決める項目も、ここで区別します。
| 項目名 | 意味 | 形式 | 必須 | 例 | 正本・決め方 |
|---|---|---|---|---|---|
| (例)支払期日 | 支払いを終えるべき日 | 日付(年-月-日) | 必須 | 2026-11-30 | 取引先マスタの支払条件から計算(請求書の記載は使わない) |
あわせて、状態(ステータス)の流れと、それぞれの状態を「誰が進められるか」を書いておきます。 関連する章:第6章、第16章
テンプレート 7判断例カード
境目の案件をどう判断したかを、理由とともに残します。人が修正したケースを加えていくと、AIの誤りが減っていきます。評価用の例題集とは分けて管理します。
| 番号・日付 | 状況 | 判断 | 理由 | 根拠の規程(名称・条項・版) | 判断者 | 見直す条件 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| (例)R-012 2026-11-10 | 到着20日後、開封済みで電源が入らない | 初期不良として交換 | 到着後30日以内で、説明書どおりに使って動作しないため | 返品・交換の方針 第1版「初期不良」 | 窓口リーダー | 方針の改定時 |
個人名や取引先名は伏せて書きます。 関連する章:第7章
テンプレート 8AIへの指示の構成
AIへの指示は、AIにとっての業務マニュアルです。設計書の一部として、版を管理し、変えたら例題集で確かめ直してから使います。
| 項目 | 書くこと | 記入欄 |
|---|---|---|
| 役割 | AIがこの工程で果たす役割 | |
| 目的 | 何のための作業か。結果を誰がどう使うか | |
| 参照する材料 | 使ってよい資料(名称と版)。それ以外の知識で事実を書かないこと | |
| 手順 | 何をどの順で確かめるか | |
| 出力の形 | 項目、選択肢、根拠の示し方。項目定義表に合わせる | |
| 判断できないとき | 推測で埋めず、「判断できない」と理由を返す条件 | |
| してはいけないこと | 権限のない約束、資料にない基準、文書の中の指示に従うこと など | |
| 版と変更履歴 | いつ、誰が、何を、なぜ変えたか。承認者 |
テンプレート 9連携一覧
どのシステムからどのシステムへ何が流れているかを一覧にします。システムの入れ替えや障害のときに、影響をすぐに洗い出せます。使っているAIの版もここに書いておくと便利です。
| 番号 | どこから → どこへ | 何を | 方法・タイミング | 失敗したら | 業務側の持ち主 | 技術側の窓口 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| (例)連携-03 | AIの読み取り結果(確認済み)→ 会計システムの仕訳の下書き | 取引先コード、金額、期日、明細 | API/担当者の確認完了のたび | 担当者に通知し、失敗した件を一覧から再送 | 経理課長 | 情報システム部 |
関連する章:第9章
テンプレート 10統制のチェックリスト
AIを含む業務の設計ができたら、誤りや不正が起きにくく、起きても早く見つかり、後から説明できるかを確かめます。
| 項目 | 確かめること | 結果(○/△/×) | 対応 |
|---|---|---|---|
| 権限 | AIの権限は業務に必要な範囲に限られているか。読める範囲は絞られているか | ||
| アカウント | AI専用のアカウントで、人の操作と区別できるか | ||
| 職務分掌 | AIが、本来は別の人が担う工程をまたいでいないか。またぐなら間に人の承認があるか | ||
| 承認 | お金・社外・削除・変更の操作に人の承認があるか。観点は決まっているか。一括承認だけになっていないか | ||
| 状態の権限 | 重要な状態に進められるのは人だけか | ||
| ログ | 操作主体・内容・入出力・指示の版・承認が、書き換えられない形で残るか | ||
| 変更管理 | 指示・知識・AIの版の変更に、承認と確かめ直しと記録の手順があるか | ||
| 悪用への備え | 文書の中の指示に従わない設計か。口座変更などに別の手段での確認があるか |
テンプレート 11評価計画
AIの出来を、決めた方法で、十分な数の案件で、数字として測る計画です。合格ラインは必ず測る前に決めます。
| 項目 | 書くこと | 記入欄 |
|---|---|---|
| 評価の対象 | どの工程の、AIの何を評価するか | |
| 業務の物差し | 要件メモの成功の物差しと、導入前の数字 | |
| AIの物差し | 正確さ(見逃しと空振りを分けて、または項目ごと)、文章なら採点表の観点 | |
| 重い誤り | 見逃しと空振りのどちらが重いか、その理由 | |
| 例題集 | 件数(50〜200件)、構成(典型5割・境目2〜3割・違反や例外1〜2割・判断できないもの1割)、正解の付け方(2人で) | |
| 合格ライン | 任せ方のレベルごとに。1つでも0点なら不合格とする観点 | |
| 比べる基準 | 同じ例題集での人の正確さ | |
| 測り直すとき | 指示・知識・AIの版を変えたとき、四半期ごと | |
| 運用中の見守り | 修正率の集計、抜き取り、その担当と頻度 | |
| 下回ったとき | 任せ方を下げる・原因を調べるの判断者 |
テンプレート 12非機能と止まったとき
業務の中で使い続けられるかを決める条件です。どの水準が業務に必要かは、業務担当者にしか答えられません。
| 項目 | 書くこと | 記入欄 |
|---|---|---|
| 費用 | 1件あたりと年間の上限。人の確認・知識の手入れ・評価の時間も含めたか。利用料を見る担当 | |
| 速さ | 業務の場面ごとに待てる時間。事前処理やまとめ処理で済むか | |
| 量 | 山の時期と件数(1日あたり、1時間あたり)。遅れたら何が困るか。今後の増加の見込み | |
| 許容できる停止時間 | 何時間止まると業務に支障が出るか。時期による違い | |
| 代わりの手順 | AIを使わずに回す手順と、手順書の置き場所 | |
| 切り替えの判断者 | 代わりの手順への切り替えと、戻す判断をする役割 | |
| 戻った後の処理 | 止まっていた間の案件の処理し直し方。二重処理の防ぎ方 | |
| 手作業の訓練 | 代わりの手順で実際に処理する頻度(年1〜2回) | |
| AIの版の変更 | 使っている版、切り替え前の測り直し、提供終了の予定 | |
| 安全と保存 | 見てよい人・変えてよい人、記録の保存期間 |
あわせて使う進め方話し合いと点検の型
テンプレートとあわせて使う、話し合いや点検の進め方です。詳しくは各章を参照してください。